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漫画「夢印-MUJIRUSHI-」を解説。映画のような完成されたストーリー | ネタバレレビュー

どうもー、ガイコツ(@of_za_dead)です。


さて、先日浦沢直樹展 埼玉の巻に行ってはじめて知り、即座にネット購入した漫画、夢印-MUJIRUSHI-豪華版。

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なんと、フランスが誇るルーヴル美術館から執筆依頼を受けて描きあげた作品なんです。


今回はこの

夢印-MUJIRUSHI-豪華版

のコミックスをネタバレありでご紹介していきたいと思います。


さあ、魅惑の浦沢ワールドを覗いていきましょう☆

ヒウィゴゥ(ง ˙ω˙)ว

カモン(ง ˙ω˙)ว


夢印-MUJIRUSHI- ※ネタバレあり

夢印-MUJIRUSHI-は、2017年10月からビッグコミックオリジナルで連載された、フランスのルーヴル美術館とのプロジェクト作品です。

ルーヴル美術館が、漫画を、①建築、②彫刻、③絵画、④音楽、⑤文学(詩)、⑥演劇、⑦映画、⑧メディア芸術につぐ「第9の芸術」として認め、ルーヴル✕漫画のコラボレーションを企画し、2014年に浦沢先生に執筆を依頼して生まれた作品です。

この時点ですでにスケールがでかすぎてビビる一般庶民、ガイコツです笑
 
www.shogakukan.co.jp

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夢印-MUJIRUSHI-豪華版

届きましたー!

大変美しい装丁!

夢印-MUJIRUSHI-豪華版

夢印-MUJIRUSHI-豪華版


通常版と豪華版の違いは、以下になります。

〈通常版〉
●264ページの特大ボリューム
●両面スペシャル印刷カバー
●判型はB6判
定価:本体780円+税


〈豪華版〉
●特製美麗装飾箱入り
●上下巻の分冊仕様
●カラーページ完全再現
●雑誌掲載時と同サイズのビッグなB5判
定価:本体2700円+税
※豪華版のコミックスの内容は、通常版と同じです。

世界騒然!浦沢直樹氏『夢印-MUJIRUSHI-』通常版&豪華版発売 – 小学館コミック

分冊仕様の収まりはこんな感じ。

夢印-MUJIRUSHI-豪華版

表紙は、1巻がかすみちゃん、2巻が所長となっています。

夢印-MUJIRUSHI-豪華版

裏表紙はカラスのマリア。


B5版でカラーページ再現は嬉しいですねー!

夢印-MUJIRUSHI-豪華版


夢印-MUJIRUSHI-全話解説 ※ネタバレあり

1しぇー! 研究所

何者か(男性)が、ある女性になにか石のようなものを手渡そうとして、誤ってその物体を落としてしまうという描写から、物語は始まります。

意味有りげな描写。


そして舞台は東京。

とあるうだつの上がらないツイてない男が人生のドツボにハマって、にっちもさっちもいかなくなったときに偶然あるマークを見つけます。


わらにもすがる思いでその印を追っていくと、”仏研”の看板のかかった古めかしい洋館にたどり着きます。

そこにはカラスのマリアと、1人の出っ歯の人物が待ち構えていました。

かれこそが"おフランス研究所(仏研)"所長のイヤミその人でした!

2しぇー! 花の都

冒頭では、何者かがフランスのミッテラン元大統領に追いすがり、SPに静止される場面が挿入されます。

同時に、フランス研究所を監視するある中年男性が。

電話の内容から、どうやら警察関係者のようですが…。


この第2話は、所長がフランスの素晴らしさ、ルーヴルの素晴らしさを語るシーンがほとんどを占めています。

ちなみに、ミッテラン元大統領の愛人と隠し子の話や、記者から質問を受けた際に、“Et alors ?”(「エ・アロール それが何か?」という意味のフランス語)と応えたというエピーソードなどは、全て実話です。

3しぇー! 一枚の絵

冒頭シーンは警察によるガサ入れシーン。

所長が、フランス人窃盗団による絵画密売に加担している疑惑が浮上します。


そして、所長の手元には、ルーヴルで所長が惚れに惚れ込んだという名画、ヨハネス・フェルメールの『レースを編む女』が!

これは何を意味するのか???


ちなみに、シルヴィ・バルタンあなたのとりこはこちら。

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そう、この曲が「あなたのとりこ」です。聴いたことあるでしょう?

サビのメロがとにかく美しいですね。

間奏もこの歌メロをなぞります。

最後の転調もいい。

4しぇー! 丸い石

回想シーン。

フランスのとある家庭。

自称"伝説のシャンソン歌手"マダム・パルドーと少年・ミッシェルのもとに、日本から小包が届くシーンが描かれます。


舞台は戻り、鴨田親子と仏研所長のシーン。

所長のもとにあった『レースを編む女』は、所長による贋作でした。


所長は、かつてのビンセンツォ・ペルージャによるモナリザ盗難事件(これも実話です)を引き合いに出し、モナリザの紛失中に、モナリザの贋作が高値で売れまくった話をヒントに、あるプランを提案しますが、その代償として、ある石を、ルーヴルの元あった場所に戻してほしいと持ちかけます。

この石!おそらくは、1話冒頭で、所長らしき人物が誰かに渡そうとして落としてしまったあの石です!

所長の出っ歯に似たマーク、鴨田たちが追いかけてきたマークが刻印されています。

この石は、所長がルーヴルから持ち出したと言うが…!?


所長の話にまんまとのせられフランスに来てしまった2人。

彼らがたどり着いたのは、回想シーンで歌っていた、自称"伝説のシャンソン歌手"マダム・パルドーのところでした。

5しぇー! 荷物

大火事の中、身を挺して子供を救う若き消防士。

彼は、マダム・パルドーの孫、ミシェルの大きくなった姿でした。

かなりたくましく育ちましたね♪


帰宅すると、待っていたのは鴨田親子。

家には、所長から届いたらしき荷物。

ここで、重要な人物”キョーコ”の名前が出てきます。


20年以上も昔、マダム・パルドーのアパートに4年間住んでいた日本人、キョーコ。

両親を早くに事故で亡くしたミシェルにとって、キョーコは母のような存在で、マダム・パルドーにとっては娘のような存在でした。

ミシェルは、キョーコに日本語を教わっていたおかげで、日本語がペラペラ。


自分たちがなぜここを訪れたのか、全てをミシェルに打ち明けるかすみ。

そして、ミシェルから驚きの言葉が。

「その石には、このマークが描かれてたろ?俺もキョーコに同じこと頼まれたんだ。」

「ええ!?」


なるほどー、そうきましたか!

ここで1巻終了、このヒキは上手い!

さすがは浦沢先生です。

6しぇー! マリア

所長が走っています。

かなり慌てている様子。

ポケットからこぼれ落ちたのは、あの石。

所長はそれを拾い上げ、再び走り出します…。


キョーコはミシェルに「いつかこれをルーヴル美術館に置こうとする日本人が現れたら、手伝ってあげて」と伝えていました。

所長の提案した犯罪プランはともかく、キョーコの願いは叶えてあげたいミシェル。

かすみはというと、気が進まないものの、その石が彼らにとっての夢の印なんだという想いは強く…。


舞台は変わって日本。

公園でカフェオレとクロワッサンを楽しむ所長のもとに、例の刑事が現れます。


(この刑事さん、将棋棋士の中田功”コーヤン”先生に似てますね)
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尋問のようなやりとり。

ますます所長が怪しくなってきますが…。


場面はフランスに戻って、Xデーに備えた予行演習をする鴨田親子とミシェルら。

カラスのマリアにまつわるエピソードなども語られます。

7しぇー! 捜査網

ビバリー・ダンカン号で、大スクープを撮影してしまい、身の危険を感じる2人の記者が描かれます。

クライマックスで活きる重要な伏線です。


さてさて、ついにXデー当日。

ブブゼラを首にかけ、「ブブゼラが鳴ったら避難訓練の開始です!」と、ある包みを配るかすみ、ミシェル、マダム・パルドー。

※ブブゼラとは、南アフリカに起源をもつ楽器で、ラッパのようなものです。

ブブゼラ - Wikipedia

包みは、仏研からの、例の郵便物ですね。

鴨田父は、ビクビクしながらもルーヴル入りしました。


一方、コーヤン先生似の刑事さんは、パリ市警のジューヴ警部に、鴨田親子の写真を送って警戒しろと伝えます。


ここで、かすみがミシェルの同僚に隔離されます。

ミシェルたちは、かすみたちに協力するふりをして、実は例の「レースを編む女隠匿計画」を(かすみをなるべく傷つけないように)辞めさせようとしていたのです。

例の石は、キョーコの夢を叶えるため、一瞬だけ、ルーヴルに置こうと思っていました。


ここでジューヴ警部が登場。

ミシェルたちは、鴨田親子が警察にマークされたと知ります。


さあどうなる!クライマックスに突入!!

8しぇー! ブブゼラ

鴨田父が警察に捕まる前に助けようと奔走するミシェル。

隔離され、閉じ込められるかすみ。


かすみは、所長の言葉を思い出します。

「思い描かない夢は…絶対にかなわないざんす。願った夢だけが、かなうざんす。」

かすみ、夢を叶えるべく監禁から脱出!

その際に、ブブゼラを落としてしまいます。


どうにかミシェルと合流し、鴨田父を助けるためにブブゼラ作戦を結構しようとするかすみですが、ブブゼラが紛失しています。

ここで、歌声をカラスに例えてバカにされていたというミシェルのエピソードが活きてきます。

ブブゼラの代わりに、ダミ声で大絶叫!


ブブゼラが鳴ったら開けるようにと包みを配られていた美術館の観客たちは、各々配られた包みを開封します。

そこに入っていたのは、あのビバリー・ダンカンマスク!


ファイナルしぇー! 夢の彼方

かすみとミシェルもマスクをかぶって鴨田父を探します。


ミシェルのダミ声ブブゼラが父に届いていないかと案じたかすみは、「ブーーー!」と叫びながら館内を走る!

それを見ていた人たちが、面白がって、真似します。「ブーーー!


やっと事態に気がついた鴨田父。

マスクを被ってレースを編む女を隠そうとするも、腰が抜けて上手くいきません笑

そこにかすみが到着。全てを諦めて、「ブーーー!」と叫ぶダンカンマスクにまぎれて美術館を脱出!

しようとするも、父、「石を置き忘れた!」と戻っていく。


さて、館外はダンカンマスクを被った大群衆が「ブーーー!」と叫びながら大騒ぎ。

これが、ダンカン大統領に対するブーイングデモだと勘違いされます。

これを見た例の2人の記者は、勇気を振り絞ってダンカン大統領のスキャンダルを告発。

これによってダンカン大統領のスキャンダルが次々に明るみに出て、反ダンカンデモが世界中に広がります。

ダンカンデモでは、鴨田樹脂加工工業製のオリジナルマスクが大人気!鴨田家の金銭問題はクリアされたのでした。

そして、お母さんも帰ってきたー(^_^;)

帰ってきたお母さんのバツの悪そうな顔の描写が上手すぎる(^_^;)


半年後、忙しい家族を代表して、かすみが渡仏。

ミシェルたちに感謝を述べるためです。


そしてラスト、ミシェルが、キョーコから聞いたあの石の話の全容を語ります。

キョーコと、あるフランスに詳しい、「レースを編む女」が好きな男との出会い、2人の別れ、そして、あの石の約束。


石はいま、ルーヴルに飾られていました。

半年の間、誰にも気づかれずにそこにありました。

キョーコとある男の夢の印。

願った夢だけがかなう。

キョーコと約束を交わしたその男は、果たして所長だったのか。

誰にも知る由はありません。


日本では、コーヤン刑事の追っていたフランス絵画窃盗・密売事件の黒幕が逮捕されますが、それは所長ではありませんでした。

コーヤン刑事が慌てて仏研に行くと、すでに看板は消え、所長は仏研ともども姿を消していました。

残されていたのはカラスのマリアだけ。

そのマリアも、どこかへ飛び去っていきます。


「あいつは………誰だ!?」



最後に響き渡るセリフは、「シェーーーーーー!!」

夢印-MUJIRUSHI-の謎

レビューを描きながら何度も読み返しましたが、どう解釈していいかわからない箇所がいくつかありました。


なにかに急かれるように所長が走り、石を落としてしまうシーンが1巻の冒頭と、2巻の冒頭で2度挿入されました。

あれは所長の心象風景なのでしょうか。

泰然と構えていた風の所長でしたが、2人が出会った証としてルーブルにあの石を飾るはずが20年もの間実行に移せず、内心は焦っていたということなんでしょうか!?


2話の冒頭でミッテランに迫る人物は、いったい誰!?

あれは所長だったんでしょうか?

所長は本当は渡仏したことがあるのか?ないのか?

どっちにも読めますね。


それとミッテランとともに映ったあの写真。

所長は本当にミッテランと東京で会っていた?

それともあの写真は合成!?

合成だとすると、東京タワーを修正しないのは不自然ですし、もっとわからないのは手渡していると目されるおかめの箸置き。

合成ならばあんなものを合成する意味はないし、本当の写真ならどういうシチュエーションなんだ!?

ここは本当にわかりませんでした。



もっと根本的な謎は、仏研とはなんなのか、所長はなぜ20年も石を手元に置いておいたのか、鴨田親子は偶然仏研に迷い込んだのか、それとも所長に招かれたのか。

所長はいったいどんな存在なのか…


かなり読み手に判断を委ねた内容になっていると思います。

わたくしガイコツ、こういう物語に弱いんですよねー…色々と妄想して楽しんでしまうのです…笑




まとめ…伏線が見事に回収されていく、映画のように完成されたストーリー

いかがでしたか?

簡単にご紹介しましたが、天才・浦沢直樹の真骨頂のような作品に仕上がっています。


この作品を手にとったみなさんには是非あとがきをお読みいただきたいのですが、浦沢先生の「人間のつくり出すものは等しく尊いものであり、等しく儚くばかばかしかったりするもので、誰かが芸術として認定したり順番をふったりするものでもないだろうと思うのです。」という言葉に、ロックの精神というか、反骨精神というか、そういうものを感じ、そして感服しました。

はっきりとした口調で、理路整然と、ルーブルの態度を批判してるんですよ。

もっともな理屈でもありますが、あのルーブル美術館から執筆依頼を受けた作品のあとがきで、なかなか書けないでしょうこれは。


一番最後の一言もそうですね。「ルーブル美術館に日本漫画の幹の太さが少しでも伝われば」という言葉に、浦沢先生のプライド、いや、日本の漫画文化を誇示する姿勢が現れていると思います。

装丁の帯にもありますね。「おフランスよ、これが漫画ざんす。」

なんと気持ちのいい一言か。


内容について言えば、本当に完璧に面白い作品でした。

イヤミというキャラクターを持ってきて、まさかこんな作品をつくってしまうとは。

ミシェルという魅力あるキャラクターが登場しますが、フランスの消防士の階級章がまさかのあのマークだというのも出来すぎていますよね。

全部計算づくなのが本当にすごい。


1本の映画を観るような作品でした。

全ての漫画フリークのみなさんにおすすめするざんす。

「シェーーーーーー!!」