ガイコツブログ

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日本大学アメフト選手の反則行為問題に関する少考察〜法学的視点から〜

どうもー、ガイコツです。

アメフトのラフプレー

連日話題になってますねぇ、アメリカンフットボールの試合において、日本大学(以下日大)の選手が悪質な反則行為で関西学院大学(以下関学)の選手に怪我を負わせたあの件


本記事では、この件について、法律学的な視座から、ちょっとだけ真面目に検討してみたいと思います。




まずは問題の行為がどういったものか確認してみよう

なにはともあれ、問題となっている危険タックルがどんなものだったかを、一旦ここで確認してみましょう。

youtu.be

これは確かに誰が見てもひどいものですね。

アメフトでは、ボールを持たない無防備な選手へのタックルは反則行為なのだそうです。

 日本アメリカンフットボール協会の公式規則によると、パスを投げ終えたクオーターバックや、ボールを蹴り終えたキッカーらは「無防備なプレーヤー」と定義され、タックルするのは背後からはもちろん、正面からでも反則になる。
出典:産経HP

主題はこの行為の違法性

さて、本件における論点は色々とあるかとは思いますが、本記事では、その行為の違法性に限って論じてみたいと思います。

当該行為はどうやら反則行為でありそうですが、法的にはどうなんでしょうか?

スポーツ中に行われた行為であるのでその点を踏まえて考えなければなりません。

違法なのか?合法なのか?


この点詳しく考察されているのが、まさぽち (id:pochi-kohchou)さんの↓の記事です。
www.legal-memo.com

まさぽちさんが述べているとおり、スポーツ競技の最中に起こった行為では、たとえ相手が怪我を負ったとしても罪に問えない場合が刑法に規定されています。

このように、ある要件を満たしている場合に、違法な行為が違法でなくなることを、「違法性の阻却(そきゃく)」と表現します。

スポーツ競技中になされた傷害行為の違法性阻却事由

刑法第35条はこう規定しています。

刑法第35条(正当行為)


法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

どういうことかというと、例えば、ボクシングの選手が相手を殴って怪我をさせるたびに傷害罪に問われるわけはないですね?

これは、ボクシングという競技において、相手を殴りつける行為が、刑法35条にいう「正当行為」だからです。


レスリングやMMA(ミックストマーシャルアーツ=総合格闘技)なども同様ですね。

試合内容によっては、凄惨ともいえるほどに相手を痛めつけますが、これらも正当行為として罪には問われません。


では、ボクシングの試合で、ゴングが鳴った後のインターバル(ラウンドとラウンドの間)中に、突如として自分の椅子をつかんで相手に殴りかかり、怪我をさせたとしたらどうでしょう?

この場合も違法性は阻却されるでしょうか?

35条<正当行為>の要件

その行為が正当行為として違法性阻却されるための要件を判示した裁判例があります。


当該事案は、大学の日本拳法部の部員が退部届を提出したところ、上級生の部員から、練習名目で制裁としての暴行を受け、その結果、脳挫傷で死亡した事件につき、その暴行を加えた上級生の部員が被告人として傷害致死罪で起訴されたというものです(大阪地判平成4年7月20日 判例時報1456号159頁)。

当該判決では、スポーツとして行われる格闘技及びその練習が正当行為として違法性を阻却されるためには、

①スポーツを行う目的で

②ルールを守って行われ

③相手方の同意の範囲内で行われる

ことを要するとしています。


これを素直に解釈すれば、本件日大アメフト選手の反則行為は、少なくとも②ルールを守っておらず(反則行為である)、また③相手方があのような反則行為について同意しているとも解されず、違法性は阻却されないと考えるのが妥当でしょう。

また、①スポーツを行う目的であったかどうかについても、この動画からは、相手を傷つける目的で行ったと推認するのが多数説になりうると考えられます。


したがって、この反則タックルには違法性がみとめられ、刑法上の傷害罪であると考えるのが妥当です。

指導者の責任、違法性

ここまでは、前掲まさぽちさんのブログでも(さらに詳しく)検討されていますが、ここからは本記事独自の視座で論じてみたいと思います。

それは、日大・内田前監督の法的責任についての検討です。


渦中の宮川選手は、当該行為が監督の指示であったことを、会見において明確に述べました。
youtu.be

この、監督による指示というものに違法性はあるのでしょうか。ないのでしょうか。


日本テレビ「行列のできる法律相談所」に出演する北村晴男弁護士は、「内田前監督が有力な反証をあげられない限り、内田前監督について傷害罪の教唆が問われる可能性もある」としています。
kimuratiba.space


教唆犯とは他人をそそのかして犯罪を実行させることで、正犯(実行者)と同一の罪に問われることになります。

刑法第61条(教唆)


1.人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。

2.教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。


わかりやすい例を挙げますと、シンをそそのかしてユリアを奪うように仕向けたジャギの行為は教唆にあたるということです。

ジャギの悪魔の囁き


教唆が成立する要件は、通説では

  • そそのかし行為がなければその行為がなされなかったであろうこと
  • そそのかし行為と当該行為のあいだに因果関係があること

とされていますが、宮川選手の会見をみるかぎりでは、暴行の教唆が成立しそうです。

そのため、前掲北村弁護士も、「有力な反証がないかぎり」という前提のもと、教唆の可能性がある、としているのですね。

会見のとおりなら教唆である、ということだと解されます。

まとめ…権力者の絶対命令に翻弄される弱者

内田前監督は、人事を担当する常務理事のうえ、理事長に次ぐ、実質大学のナンバーツーだといいます。
biz-journal.jp

そういう絶対的な権力者から命令を受けたとき、わたしたちはどのように対応したらいいのでしょうか。

実行者である宮川選手の責任は免れ得ないのは本人も承知しているとおりですが、とはいえ、彼と同じ境遇におかれたとき、10人が10人命令に抗うことができるでしょうか?

わたくしガイコツは、このあたりに、内田前監督の悪質さ・卑劣さを感じてしまうのです…。


今回は堅苦しい記事で失礼をいたしました。それではこの辺で、バイキュー☆